みさちのにっきちょう

ハイパムフィクサーというバンドのベースの人がどーでもいいことを書いています。Twitter@misachi_bass

ピンポーン!の空耳と、昔の隣人のはなし

たまに、浅い眠りのときに聞こえる空耳があるのね。ピンポーン!って、玄関のチャイムの音が、頭の左側で鳴るの。これがまた本物みたいななり方で、本当に鳴っているのか、空耳なのか分からない。それで、このピンポーン!が聞こえると、心臓がばくばくしてきて、身体と頭はまだまどろんでいるのに、心臓だけが飛び出しそうなくらいですごく気持ち悪くて怖い。さっきもピンポーン!が頭の左側で鳴って、ズルズルと起きてしまった。たぶん、こんな夜中にチャイムを押す人はいないだろうから空耳だと思う。

 

なんでこんなにピンポーンが怖いかというと、一人暮らしのときの隣人から嫌がらせを受けてたからだと思う。なんだか今日はそのときのことが堰を切ったように頭に浮かんでくるので書いて紛らわしたい。特になんの意味もない話だよ。

 

昔、割と大きめの個数が多いマンションに住んでたのね。ファミリー向けの部屋数多いところとか、一人暮らし用のワンルームとか混在してるようなところ。分譲で売られてたものを、買った人が貸してるところだった。わたしは学生時代から何年かそこに住んでた。

 

隣の人は、わたしが住み始めて2年後くらいに引っ越してきた人で、白髪の短髪の女性。一人暮らし。背が低くて細い人で、顔が猿に似てた。怖いくらいニコニコしてた。仏壇のお供え物だけど、自分はお酒が飲めないからってビールとかワンカップを定期的にくれた。ちょっと怖かったけど、まぁ頂くのも近所づきあいかと思ってもらってた。ある時から、隣の人が、その隣の部屋の人のことを猛烈に悪くいうようになった。わたしの隣の隣の人ってことね。女性の一人暮らしで、男を2人も連れ込んで毎晩うるさい、って話らしい。わたしはその人を知らないので、はぁそうですか、くらいに聞いてた。それがしばらくつづいて、じきに隣の隣の人は引っ越した。

ある日の20時ごろ、チャイムがピンポーン!って鳴った。理由は忘れたけどわたしは疲れて夕方から寝てて、そのチャイムで起こされた。出てみたら、警察官がいた。初めて警察官が来てすごく驚いた。小太りの優しそうな男性の警察官だった。その人が言うには、隣の人がわたしの部屋が煩くてたまらないと通報して来たらしい。もちろんわたしはそれまで寝ていたので、本当に寝耳に水だ。警察官も、まぁ可哀想にみたいな顔してて、今まで寝てたんです、って言ったら、分かりましたって言って終わった。そのあと、隣へ行き、今度は隣の人と話してた。警察官は、煩くないし寝てましたよって話してくれてたけど、隣の人は猛烈に怒り狂ってて、いつも隣が煩くて眠れないんだ!非常識だ!って怒鳴り散らしてた。

それから、その後もよく分からないタイミングで警察官が来るようになった。通報があったら見にこないといけないらしい。隣人には説明してるんだけどね、こっちも仕事だから、みたいな感じて困った顔してた。

時系列がよく思い出せないけど、隣人が直接来ることも何度もあった。夜中まで煩い、非常識だ、いい加減にしろこっちは眠れないんだ、と玄関口で怒鳴られまくった。そういう生活が長いこと続いた。どれくらい続いたかはよく覚えてないけど、半年は続いたと思う。もう扉を開けるのも嫌になって、無視するようになったら、扉の向こうから怒鳴られるようになった。

 

それで、ピンポーン!が怖くなった。ああまた来るなって。ピンポーン!を聞くだけでビクッとして、心臓がバクバクしてくる。玄関のチャイムは壊れたことにして、チャイムの機械から電池を抜いて鳴らないようにした。

 

隣人からの嫌がらせ?はヒートアップして、手紙が来たり、ベランダに張り紙をされたり、壁ドン(本当の意味のやつね)をされるのは日常茶飯事だった。特に壁ドンはキツかった。仕事から帰って来て家にいると不意にドンッ!とやられるのだ。いつまでも心が落ち着かなかった。それでも、なにかやり返したらさらに悪化するだろうから無視していたら、今度はわたしが出かけるときを狙うようになった。朝、仕事に出かけるとき、わたしが扉の鍵を開ける音を聞いているのか、わたしが部屋から出た瞬間に隣人も飛び出して来る、そして例のうるさい!静かにしろ!を怒鳴ってくる。帰って来たときも同じ。わたしが部屋の鍵を開ける音で、隣の扉が開く。毎日毎日、いかに早く鍵を開けて閉めるか、部屋を出たら走っていってできるだけ声を聞かないようにするか、そればっかりやってた。

 

それで、こんなになるまで放置してたかっていうとそういう訳でもなく、管理人さんに相談したり、自治会長さんに相談したりした。だけど、結局は分譲マンションだからお互いどうにもできません、なにかあれば話は聞きますよ程度のことだった。警察にも相談した。だけど、個人的なことに警察は介入できないから、と何もしてもらえない。まぁ仕方ないんだけど。その頃は本当にいろいろ考えて調べて相談に行って、でもどうにもならなかった。

 

そういえばある日、わたしが風邪をひいて寝込んでしまっていて、友だちが部屋まで料理を作りに来てくれたことがあった。隣人とモメだしてからは、誰も部屋に呼ばないようにしてたんだけど、そのときは友だちが大丈夫だからって来てくれた。友だちが作ってくれたうどんをうまいうまいってすすってたら、案の定ピンポーン!が鳴った。無視してって言ったけど、友だちは、大丈夫だから、わたしが説明してあげる!って出てくれた。友だちは一生懸命、うるさいことなんてしてません、今風邪をひいてるから静かに寝かせてあげてくださいって説明してしてくれたけど、隣人はいつも通りずっと怒鳴ってて、最後には「こんなバカ女、死ねばいいのよ!」って怒鳴ってた。たぶん、後にも先にも、直接死ねばいいって言われたのはこれが初めてだった。

 

さすがにもうダメだと思って引っ越すことにした。引越しの日は何をされるか分からなかったから、勘付かれないようにヒソヒソと準備をした。引越しの当日、黙って引越しを始めたらそれこそ何を呼ばれるか分からないので、作業が始まる前にこっちから出向くことにした。ピンポーン!って隣の部屋のチャイムを鳴らした。突然ですが今日引っ越します。これから作業するので物音がしますが、よろしくおねがいします。それだけ言って、そそくさと逃げた。そこからはバタバタでひたすら引越しの作業に追われた。もうすぐ終わるって時に、隣人が来た。何かと思ったら手に封筒を持って、なぜか悲しげな顔をしていた。「引っ越した先でもがんばってね」みたいなことを言って封筒をくれた。確か千円か二千円か、忘れたけど、一枚お札が入ってた。それを見たら猛烈に怒りが湧いて来た。今までのわたしの苦しみをこんな小金で清算しようというのだろうか。なんで最後にいきなりいい人ぶるんだろうか。とりあえず、もう逃げたかったから、ありがとうございますなんて言って適当に終わらせた。あの時のわたしの顔はめちゃくちゃ歪んでたに違いない。

 

それで、この話は終わり、ってことになるんだけど、まだ少し続きがある。引っ越してから5年くらい経ったくらいのとき、ひとりで駅前のマックに入って適当にカウンターに座ったら、隣にいたのがあの隣人だった。最初は気がつかなかったというか、そんな人の存在はすっかり記憶の奥へ行っていて、ノーマークだったから何も思わなかった。途中で、あれなんかこの人見たことあるなと思って、気がついた時の背筋が凍る感じは忘れられない。相手はこっちのことなんて気がついてなかったみたいだ。わたしはもしも話しかけられたりしたらどうしようと冷や汗モノで、できるだけ目立たないようにすぐ席を立った。たぶん隣の人はわたしのことなんて気づいてなかったし、もはやわたしなんて覚えてないんじゃないかと思う。駅前のマックにいたってことは、まだあの部屋に住んでるんだろうか。わたしが住んでた部屋には誰か住んでるんだろうか。

 

まぁ冷静に考えれば、隣人は何かしらの病気で幻聴が聞こえていたんだと思う。しかも、一人暮らしでそれを指摘してくれる人もいなくて、結果、隣に住んでいる人が標的になってたんだと思うよ。事実だけ見たらそうなる。だけど、わたしがされたことは、わたしにとっては絶対に忘れられないし、今でもピンポーン!が怖いのはこの出来事のせいだと思う。マックで隣に座っても、わたしは気がついたって隣人はこっちに気がつかない。やった方は忘れちゃうけど、やられた方は一生忘れられないんだ。

 

ピンポーン!の音は、本当に鳴ってるときもあるし、空耳のときもある。これはもう治らないのかなぁ。玄関のチャイムを、なんか楽しいメロディのやつに変えたりしたらいいのかな。ほら、炊飯器みたいにさ、かわいらしいメロディが鳴るとかね。なーんてね。

 

おわり。