みさちのにっきちょう

ハイパムフィクサーというバンドのベースの人がどーでもいいことを書いています。Twitter@misachi_bass

「cure」を見たよ(普通の人の中に潜む憎悪こそが最高の恐怖)

 

CURE [DVD]

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不気味な殺人事件が発生した。被害者は鈍器で殴打後、首から胸にかけてX字型に切り裂かれていたのである。犯人は現場で逮捕されたが、なぜ被害者を殺害したのか、その理由を覚えていなかった。そして酷似した事件が次々と発生していった。これらの事件を追うことになった刑事の高部は、精神を病んでいる妻との生活と、進展しない捜査に翻弄されて疲弊してゆく。やがて、加害者たちが犯行直前に出会ったとされる男の存在が判明する。男の名は間宮邦彦。記憶障害を患っており、人に問いかけ続けるその言動は謎めいていた。そんな間宮の態度が高部をさらに追いつめていく。しかし、間宮と関わっていく中で高部の心は密かに癒されていく。

 

この映画を見ました。めーーーーっちゃ面白かった。

 

普通の人が突然誰かを殺し、しかもみんながみんな胸をXに切り裂いているという怪事件。高部(役所広司)という刑事が捜査をしていくお話。

 

途中から出てくる謎の男、間宮(萩原聖人)がまたよい。間宮は記憶喪失なんだけど、出会った人たちに「あんた誰?」「あんたのことが知りたい」と問いかけてくる。3つ前くらいの質問はすぐ忘れてしまって、また同じことを聞いてくる。だからちょっとウザいんだけど、間宮の甘いマスクと抑揚のないふわふわした声が、なんだか不安な気持ちを掻き立ててとても怖い。途中から、間宮が催眠術を使っていろいろな人たちに暗示をかけ殺人をさせていたことがだんだん分かってくるんだけど、見ているこっちも気を抜いたら間宮の催眠術にかかってしまうんじゃないかとドキドキしてしまう。特に、間宮と高部の二人のやりとりは緊迫感がすごくて見事。取り調べをしているはずなのに、いつの間にか間宮のペースにされてしまったりと、いつもふわふわした間宮がとても怖い。あと嫌な音が入ってたり、音の使い方がすごい。

 

映画は後半からオカルトの要素が出てくるんだけど、だんだん白昼夢みたいに、現実と妄想のシーンが入り乱れてくる。どこまでが現実で、どこまでが妄想なのか分からなくなってくるわけね。

 

それで、この映画の怖いところは、殺人を犯した人たちは、ふだんはみんな「良い人」というか「普通の人」なんだよね。殺人をしたのは、サラリーマン、教員、警察官、女医、などなど。どちらかといえば、きちんとした職についている人たち。そこに間宮が現れて「あんた誰?」から始まり「仕事大変そうだね」「奥さんは何してるの?」「女のくせにって言われたでしょ?」などなど、言葉巧みにその人の内に眠る憎しみを呼び出してくる。ふわふわと語る間宮がとても恐ろしい。普段はその「役柄(職業)」によって象られた「人格」も、それを取り払ったら何もないんでしょ?本当はあなたも憎しみを抱えてるんでしょ?と言われてるような感じで、背中がスーッと寒くなる映画です。

 

 

ここからネタバレ!!!!

 

 

そして、高部と間宮はだんだん近づいていき、とうとう間宮は高部の心の闇を表出させる。心を病んだ妻を持て余したいたが、刑事として

「感情を表に出すな」という教えを守り、妻が病んでしまってもよい夫、よい刑事として振る舞い続けていた高部。しかし、その心の闇が間宮の前で爆発する。そして、黒く汚れた雨水が、高部を「解放」する。

 

ラストシーンはとても恐ろしい。間宮を殺し、蓄音機の音を聞いた高部は新たな「伝道師」となった。一瞬、妻の姿が映るが、胸は十字に切り裂かれている。高部はレストランで食事をしている。以前は同じメニューをほとんど食べずに残していたのに、今日はすべて完食してコーヒーを美味しそうに飲んでいる。タバコに火をつけて恍惚の表情を浮かべる高部。ここで、高部の席にコーヒーを運んできたウェイトレスにじんわりとピントが移る。ウェイトレスはなにか上司に耳打ちされ、頭を下げていた。その少しあと、ウェイトレスは突然刃物をもち、スタスタと歩いていく。

 

ここで映画は終わる。んだけど、めっちゃ怖いー! 最後はたぶんウェイトレスが殺しをするんだろうけど、そのシーンはもちろん映画にはなくて、だけど、それを見ている人は確実に想像してしまう。誰の中にもあるような「憎しみ」があるきっかけで突然コントロールできないものになってしまう恐怖。これがこの映画の一番の怖さだなと思った。映画の中で殺しをしてしまった人は、その行為をひどく後悔したり、あるいはその時はそうするのが正しいと思ったと言ったり、ひどく怯えたりと、今までは普通の人生だったはずが、ふとしたきっかけで自分の憎悪が暴れ出し、人生を壊してしまうのだ。こわい、怖すぎ。

 

そして最後の高部の恍惚の表情がまた堪らない。殺人犯を憎み、間宮を憎んでいたはずなのに、今度は高部自身が伝道師となり、人々の憎悪を呼び出している。その満たされた表情が恐ろしい。しかも、間宮は記憶を失っていたけれど、高部は記憶を失っていない。さらには、普通の会話を交わしただけのウェイトレスまで暗示にかけてしまうあたり、間宮よりも恐ろしいモンスターになっていることが想像できてゾッとする。だけど、タイトル通り、高部は癒されたわけだ。恐ろしいなー。

 

妖怪よりも幽霊よりも、こういう「普通の人の中に潜む憎悪」が恐ろしいというのを巧みに描いた映画だとおもいました。じんわり背中が寒くなるね。とても素晴らしい映画だよ。おすすめ。

 

 

おわり。